不動産の引き渡し後のトラブル事例と売主の瑕疵責任|防ぎ方・対処法を解説

売主としての瑕疵責任の対象となる不動産の状態を、引き渡し前に確認し防ぐイメージ

不動産を売却し、引き渡しを終えた後に思わぬトラブルが発生するケースは多くあります。特に子育て世帯では、不動産の周辺環境や設備に対する関心が高いため、売主側としてもより丁寧で慎重な対応が必要です。

この記事では不動産の引き渡し後に売主側が巻き込まれやすいトラブル事例や、トラブルを防ぐための対策について解説します。記事を読めば引き渡しをスムーズに進められ、予期せぬトラブルを防ぐことが可能です。

不動産引き渡し後のトラブルを防ぐためには物件の状態を事前に丁寧にチェックし、買主への説明責任を果たすことが大切です。売主が信頼できる不動産会社や専門家と連携することも、不動産引き渡し後のトラブルを防ぐために欠かせません。売主がしっかりと準備を整えることで、安心して不動産の売買契約を完了し、気持ちよく次のステップへ進めます。

目次

不動産の引き渡し後に発生しやすいトラブル事例

不動産の引き渡し後の売主の瑕疵責任に関わる、設備の故障トラブル事例を連想させるエアコン

不動産の引き渡し後に発生しやすい、以下の5つのトラブル事例を解説します。

  • 設備の故障や不具合
  • 雨漏り
  • シロアリ被害
  • 境界線や土地面積の問題
  • 隣人トラブル

設備の故障や不具合

設備の故障や不具合は不動産の引き渡し後によくあるトラブルの一つです。見た目はきれいでも、設備内部の部品が古くなっていることが不動産の引き渡し後に起こるトラブルの原因です。

不動産の引き渡し後に以下の設備の故障や不具合が発生することがあります。

  • 給湯器の故障
  • エアコンの不調
  • キッチン設備の故障
  • 水回りのトラブル
  • インターホンの故障
  • 床暖房・換気システムの不調
  • 照明器具の不点灯

雨漏り

不動産の引き渡し後に多い雨漏りなどの瑕疵トラブル事例を象徴する、水滴がついた傘のクローズアップ

雨漏りは不動産の引き渡し後に気づきやすい深刻なトラブルです。実際に雨が降らなければ表面化しないケースが多く、雨漏りを不動産購入前の内覧で見つけることは困難です。

雨漏りは天井のシミや壁紙の剥がれといった目に見える被害だけでなく、気づかないうちに深刻な問題へ発展する可能性があります。雨漏りは引き渡し後の不動産に以下の問題を引き起こします。

  • 柱や梁の腐食
  • カビによるアレルギー・喘息
  • 高額な修理費用

売主が雨漏りの事実を知りながら告知を怠った場合、引き渡し後に契約不適合責任を問われる可能性があります。雨漏りの原因の特定や修繕には多くの費用と時間がかかるケースがあるため、早めの対応が重要です。

シロアリ被害

不動産の引き渡し後にシロアリの被害が見つかり、家の土台や柱といった重要な部分が傷んでいることがあります。シロアリのリスクを確認するためには、以下のサインがないかチェックしてください。

  • 床のきしみ・沈み
  • 柱の空洞音
  • 蟻道(ぎどう)

シロアリ被害が見つかると駆除費用のほか、建物を直すための工事にも高額な費用がかかります。契約内容と不適合がある場合、買主から契約不適合責任を問われる可能性があります。

境界線や土地面積の問題

不動産の引き渡し後のトラブルを防ぐ方法について、場所や契約内容を確認するイメージ。地図上の家

土地の境界線や面積に関する問題は、住み始めてから発覚しやすいトラブルの一つです。以下が原因で土地の境界線や面積に関する問題が発生します。

曖昧な境界線
隣地との境界が塀やフェンスなどで明確に区切られていない場合、引き渡し後に隣地所有者との間でトラブルに発展することがあります。特に古い住宅地では、長年の慣習で境界が曖昧なままになっているケースもあります。
登記簿と実測面積の差異
登記簿と実測面積の差異は測量技術の違いや過去の登記時点での誤差などが原因で生じます。登記簿と実測面積の差が大きい場合には契約内容や価格、引き渡し後の責任問題につながることもあります。
セットバックによる面積減少
道路幅が建築基準法で定められた4メートル未満の道路の場合、道路中心線から2メートル後退(セットバック)して建物を建てなければなりません。後退した分の土地が実質的に使用できなくなり、登記面積よりも実際に利用できる面積が減少することがあります。

土地の境界や面積の問題は買主の今後の暮らしに直接影響を与えるものです。不動産を売却する前に専門家による正確な測量や調査を行っておくと、引き渡し後の境界や面積に関するトラブルを防げます。

隣人トラブル

不動産の引き渡し後に起こる隣人トラブルは、買主にとって大きなストレスとなる可能性があります。よくある隣人トラブルの事例は以下のとおりです。

  • 生活音が大きすぎる
  • ゴミを放置し異臭が漂っている
  • 庭の一部を通行・駐車スペースとして使われる
  • 町内会などの地域コミュニティへの加入をめぐってトラブルになる
  • 落ち葉や植栽の枝が隣地に入り込んでいる

隣人との関係性は買主の暮らしに大きな影響を与える要素です。売主としても近隣の環境や人間関係について正確な情報を把握し、できる範囲で誠実に伝えておくことが大切です。

売主が売買契約前に買主に伝えるべき4つの瑕疵

不動産の引き渡しと引き渡し後のトラブル、瑕疵責任の発生を象徴する、家型のキーホルダーと鍵

不動産に瑕疵(※)がある場合、売主は買主に対し瑕疵の内容を正しく伝える必要があります。売主が買主に伝えるべき瑕疵は以下のとおりです。

  • 物理的瑕疵|建物や土地の構造に関する欠陥
  • 法律的瑕疵|法律上の制限に関わる問題
  • 心理的瑕疵|住むことに抵抗を感じさせる要因
  • 環境的瑕疵|物件自体は問題ないが周辺環境に関する問題

売主が瑕疵を知りながら買主に告知しなかった場合、契約解除や損害賠償などの法的責任を問われる可能性があります

※ 瑕疵(かし)とは、欠陥や不具合のことです。民法改正により「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に変更されましたが、本記事では瑕疵という用語を使用しています。

物理的瑕疵|建物や土地の構造に関する欠陥

物理的瑕疵とは建物や土地そのものに存在する欠陥や不具合のことです。建物や土地に関する以下の問題が物理的瑕疵に該当します。

  • 雨漏り・水漏れ
  • シロアリ被害
  • 建物の傾き・ひび割れ
  • 給排水管の故障
  • 土壌汚染
  • 地中埋設物

契約に適合しない物理的瑕疵が発覚した場合、売主は契約不適合責任を問われ、損害賠償や契約解除を求められる可能性があります

法律的瑕疵|法律上の制限に関わる問題

不動産トラブルや瑕疵責任に関する対処法と法律問題を扱うことを示す、天秤と木槌、法律書

法律的瑕疵とは法律によって土地や建物の利用が制限される問題です。建物に欠陥がなくても、買主が希望どおりに利用できない可能性があるため、売主は買主に対して正しく伝える必要があります。

以下のケースが法律的瑕疵に該当します。

  • 建ぺい率・容積率オーバー
  • 再建築不可物件
  • 市街化調整区域
  • 都市計画道路の予定地
  • 消防法違反

心理的瑕疵|住むことに抵抗を感じさせる要因

心理的瑕疵とは建物そのものに問題はないものの、住む人が「気持ち悪い」「怖い」と感じるような、心理的な抵抗を感じる要因のことです。心理的瑕疵は買主が不動産の購入を判断するうえで重要な情報になります。

心理的瑕疵と判断される可能性がある要因は以下のとおりです。

  • 自殺・殺人・火災による死亡事故
  • 特殊清掃が必要な孤独死・転落死

国土交通省のガイドラインでは自然死や日常生活の中での不慮の死について、原則告知しなくて良いとしています
» 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(外部サイト)

環境的瑕疵|物件自体は問題ないが周辺環境に関する問題

物件そのものに問題はなくても、周辺の環境が住み心地に影響を与える問題点を「環境的瑕疵」と呼びます。買主は購入後の生活をイメージしたいため、周辺環境は重要な判断材料となります。売主が知っている周辺環境の問題は、売買契約前に買主へ正直に伝えましょう。

住む人によっては不快に感じたり生活に支障が出たりする可能性のある、以下の要因が環境的瑕疵にあたります。

  • 治安に不安を感じさせる施設(暴力団事務所など)がある
  • 騒音・振動を感じる
  • 悪臭がする
  • 日照・眺望が悪くなっている
  • 電波障害が起きている
  • 近隣トラブルが起きている

環境的瑕疵がある場合、売主は損害賠償や契約解除を求められるリスクがあります

不動産の引き渡し後のトラブルを防ぐ方法

不動産トラブルを防ぐための瑕疵のチェックリストを作成し、引き渡し前に確認する作業

不動産の引き渡し後に起こりがちなトラブルや瑕疵を完全に防ぐことは困難です。しかし、入念なチェックと適切な準備によって、不動産引き渡し後のトラブルの発生リスクは大幅に下げられます。

不動産引き渡し後のトラブルを防ぐためには、以下のポイントを意識しましょう。

  • 引き渡し前にチェックリストを確認する
  • 信頼できる不動産会社を選ぶ
  • 専門家によるサポートを活用する

引き渡し前にチェックリストを確認する

不動産の引き渡し前にチェックリストを使って物件の状態を確認すると、後のトラブルを防げます。買主に安心してもらえるよう、以下の項目をチェックしましょう。

  • 雨漏りの有無
  • シロアリ被害の有無
  • 建物の不具合(傾き・腐食・不具合など)の有無
  • 給排水施設の故障・漏水の有無
  • 改築・修繕などの履歴及び資料の有無
  • 火災被害の有無
  • 土壌汚染に関する情報の有無
  • 騒音・振動・臭気などの有無
  • 近隣の建築計画の有無
  • 電波障害の有無
  • 売買物件に影響を及ぼすと思われる周辺施設の有無
  • 過去に起きた事件・事故の有無

引き渡し前に問題が見つかれば売主としても早期に対応でき、後々のトラブルを防ぐことにつながります。

信頼できる不動産会社を選ぶ

不動産トラブルの対処法や瑕疵責任の解説を依頼する、信頼できる不動産専門家・弁護士のイメージ

引き渡し後のトラブルを防ぐためには、信頼できる不動産会社を選ぶことが重要です。信頼できる不動産会社なら専門的な知識で物件のリスクを事前に教えてくれるため、安心して手続きを進められます。

以下のポイントを確認して信頼できる不動産会社を選びましょう。

  • 不動産会社の免許が有効で、過去に行政処分を受けていないか
  • 探している地域での売買実績が豊富にあるか
  • 良い点だけでなく、悪い点やリスクも隠さず教えてくれるか
  • 担当者の返信が早く丁寧で、質問に的確に答えてくれるか
  • 希望や不安をしっかり聞いてくれて、強引な営業をしないか
  • インターネット上の口コミや評判が良いか
  • 契約を急がせず、じっくり考える時間を与えてくれるか
  • 購入後の保証やサポート体制がしっかりしているか

複数の不動産会社の話を聞いて、担当者との相性を見極めることも良い方法です。疑問点や不安に感じることを気軽に相談でき、心から信頼できる不動産会社を見つけてください。
» 不動産売却の流れを完全ガイド|初心者でも失敗しない手順を解説

専門家によるサポートを活用する

不動産の売却で後悔しないためには、専門家によるサポートを活用することが大切です。自分たちだけでは気づきにくい建物の欠陥や法律、お金に関する複雑な問題を、それぞれのプロが事前に見つけてくれるからです。

不動産の売却をする際には、以下のような専門家のサポートを受けましょう。

  • 土地家屋調査士による測量・境界確認
  • 弁護士・司法書士による法務サポート
  • ファイナンシャルプランナーによる資金計画サポート

専門家のサポートを活用することで、専門的な知識がなくても安心して不動産の売却を進められます。
» 【目的別】不動産売却の相談先6選を徹底解説!

不動産引き渡し後のトラブル発生時の対処法

不動産トラブルや瑕疵責任発生時の適切な「対処法」を示す、文字が書かれた木製ブロック

不動産引き渡し後にトラブルが発生してしまったときの対処法として、以下の2つを解説します。

  • 弁護士へ依頼する
  • 調停を利用する

弁護士へ依頼する

不動産引き渡し後にトラブルが発生し、買主との話し合いでは解決が難しい場合には、弁護士へ相談することが有効です。弁護士が間に入ることで、法律にもとづいた的確なアドバイスや対応方針を得られるため、無理のない形で問題解決を進められます

損害賠償請求や契約解除といった法的な対応が視野に入る場合や、買主との直接交渉が行き詰まった場合には、早めに弁護士相談を検討しましょう。弁護士には以下の業務を依頼できます。

  • 法的なアドバイスの提供
  • 相手方(買主)との交渉代理
  • 内容証明郵便の作成・送付

弁護士への依頼には相談料・着手金・成功報酬などの費用が発生します。依頼前に費用の内容や支払いタイミングを確認し、納得したうえで依頼してください。
» 不動産売買契約の流れと注意点をわかりやすく解説!

調停を利用する

不動産引き渡し後のトラブルは、調停を利用して解決する方法もあります。調停とは裁判所で専門の調停委員を交えて、当事者同士が話し合いで問題を解決する手続きです。

調停には以下のようなメリットがあります。

  • 裁判(訴訟)に比べて申し立ての費用が安い
  • 話し合いの内容が公開されない
  • お互いの事情に合わせて柔軟に解決策を決められる

調停は当事者同士の合意を基本とするため、お互いが納得できる円満な解決を目指せます。ただし、相手方が話し合いに応じない場合や合意に至らない場合は、調停は不成立となります。調停が不成立となった場合は、訴訟を検討する必要がある点に注意が必要です。

不動産の引き渡しのトラブルに関するよくある質問と回答

不動産トラブルや瑕疵責任に関する、読者からよくある質問や疑問の対処法を解説するイメージ

不動産の引き渡しのトラブルに関するよくある質問に回答します。不動産の売買を検討している方は参考にしてください。

支払い遅延や未払いがあったときはどうすればいい?

不動産の引き渡し後に買主からの支払いが遅れたり、支払われなかったりした場合は、契約書の内容に沿って段階的に対応を進めることが重要です。不動産売買の契約書には、支払い遅延のようなトラブルが起きた際のペナルティや契約解除のルールが明確に定められています。

不動産売買の契約書の内容に沿って対応を進める手順は以下のとおりです。

  1. 不動産会社への連絡・催促
  2. 契約書の項目確認
  3. 内容証明郵便での催告
  4. 弁護士への相談

不動産の引き渡し時に支払いトラブルが発生した際は、契約内容を確認しながら冷静に対処することが大切です。1人で解決しようとせず、不動産会社や弁護士といった専門家の助けを借りることをおすすめします。

売主の都合で不動産の引き渡しを延期できる?

原則として、売主の一方的な都合で不動産の引き渡しを延期することはできません。不動産売買契約で決められた引き渡し日は、売主と買主の双方にとって重要な約束だからです。

売主が引き渡し日の約束を守らないことは契約違反にあたります。ただし、買主が延期に同意する場合に限り、引き渡し日の変更は可能です。

引き渡し日を延期する際は、以下の点を必ず書面で残しておきましょう。

  • 新しい引き渡し日
  • 追加費用の負担者

買主が延期に合意せず、売主が引き渡しを行わない場合、買主は契約を解除できます。引き渡しの延期や契約の解除が発生した場合、損害賠償請求などのトラブルに発展する可能性があります。

引き渡しの延期を検討する際には、慎重な対応が必要です。まずは契約書の内容をしっかり確認し、不動産会社や専門家に相談したうえで、買主への説明や今後の対応方針を明確にしてください。

信頼できる不動産会社を選んで不動産の引き渡しのトラブルを未然に防ごう

不動産の引き渡し後のトラブルと売主の瑕疵責任の対処法を象徴する、家型の模型と鍵

不動産の引き渡しトラブルを防ぐには、信頼できる不動産会社をパートナーとして選ぶことが重要です。良い不動産会社は、豊富な実績と地域情報を生かした的確なアドバイスを提供してくれるからです。不動産売買の契約内容を丁寧に解説し、納得できるまで対応してくれる担当者がいる不動産会社を選びましょう。

不動産会社に直接買い取ってもらう「不動産買取」という方法もおすすめです。不動産買取を選べば一般の買主とやり取りする必要がないため、引き渡し中や引き渡し後のトラブルに関する心配がほとんどなくなります。不動産買取はスピード重視や安心感を優先したい場合に有力な選択肢です。

複数の不動産会社を比較し、口コミや評判も参考にすることで、後悔しないパートナー選びができます。1人で悩まず、信頼できる不動産のプロに相談することが不動産の引き渡し時に起こるトラブルを回避する近道です。

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この記事の監修者

山本 祥宏のアバター 山本 祥宏 株式会社komorebi 代表取締役社長

売買・投資用不動産・賃貸仲介などを経験。数字や条件だけでなく、お客様一人ひとりの背景や将来設計を踏まえた提案、そして「相談してよかった」と思っていただける関係づくりを大切にしています。

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